2011年04月28日
放射線の知識
◆自然放射線と人工放射線のちがい
最近の報道でいつも出てくるのは、「自然放射線と比べれば低いので
心配しなくていい」という言葉です。これは間違いです。
以下に市川定夫著「環境学」(232頁〜235頁)から引用(一部略)。
「人工放射線も自然放射線も、生物や人体にたいする影響は同じであ
る」との前提は間違いである。
人工放射性核種には、生体内で著しく濃縮されるものが多く、それ
ゆえに大きな体内被曝をもたらすという、自然放射性核種には見られ
ない特質がある。
それはなぜかというと、生物の進化と適応の過程と密接な関係がある。
この地球上には、生物が現れる以前から、自然放射性核種が存在して
いた。その代表的なものが カリウム40である。
私たちは宇宙線、地殻中からのもの、食物などを通して体内に入った
もの、合わせると、年間850マイクロシーベルト前後の自然放射線
の被曝を受けている。
自然放射線のうち、体内被曝と、地殻からの対外被曝の大部分はカリウ
ム40である。これは、生物にとって重要な元素であるから、否応なし
に体内に入ってくる。しかしカリウムの代謝は早く、どんな生物もカリ
ウム濃度をほぼ一定に保つ機能を持っているため、カリウム40が体内
に蓄積することはない。
生物が、その進化の過程で獲得してきた適応の結果なのである。
次に多いのはラドンであるが、希ガスであるため、体内に取り込まれた
り濃縮されることはなく、すぐ体内から出ていく。
これらの自然放性物質と異なり、著しい生体濃縮を示す人工放射性物
質は、いずれも自然界には存在しないものである。
例えば、ヨウ素がそうである。天然のヨウ素は、その100%が非放
射性であり、生物は、この非放射性のヨウ素に適応して、哺乳動物な
ら、それを甲状腺に選択的に集めて、成長ホルモンをつくるのに活用
する性質を獲得している。
また、ヨウ素は、海に豊富に存在するが、陸上には乏しいため、進化
の途上で陸上に生息するようになった植物は、ヨウ素を効率よく高濃
縮する性質を獲得してきている。つまり、現在の高等植物がヨウ素を
空気中から体内に何百万倍にも濃縮したり、哺乳動物がヨウ素を甲状
腺に集めるのは、いずれも、天然の非放射性ヨウ素に適応した、みご
とな能力なのである。
ところが、人類が原子力によって、放射性ヨウ素をつくり出すと、進
化の過程で獲得した、こうした貴重な適応が、たちまち悲しい宿命に
一変し、その放射性ヨウ素をどんどん濃縮して、体内から大きな被曝
を受けることになってしまうのである。
ストロンチウムも同じである。この元素の自然界での存在量はわずか
であるが、この元素と科学的性質が同じカルシウムが大量に存在し、
生物にとって重要な元素の一つとなっている。天然のカルシウムには
、放射性のものが存在せず、それゆえ生物は、この元素を積極的に取
り込んで、骨、歯、鳥の卵殻、貝殻、エビやカニの甲羅などをつくっ
ている。つまり、カルシウムをこれら組織に蓄積、濃縮するのである。
このカルシウムと化学的性質が同じストロンチウムも、これら組織に
沈着、濃縮される。したがって、原子力によってスチロンチウム90
をつくり出すと、28年という長い半減期をもつこの人工放射性核種
が、これら組織に沈着、濃縮されることになる。ストロンチウムはベ
ータ線をだして、骨髄などの組織に集中的な被曝をもたらす。
このように、人工放射性核種は、自然界になかったものであるため、
生物をあざむき、生物が長大な進化の過程で築きあげたきた貴重な性
質が、たちまち悲しい宿命に一変するのである。そして、このことこ
そが、原子力の最大の問題である。
(引用おわり)
注) 政府、東電の自然放射線の数値のごまかし
新聞、テレビでは自然界の放射線は年間2400マイクロシーベルト
あるので、○○マイクロシーベルでは危険性はない、との説明をし
ています。しかし、市川教授は年間 850マイクロシーベルト言っ
ています、ほかの書籍でも、800〜1300マイクロシーベルトを
書かれています。
2400という数字は国連科学委員会が、全地球上の住民についての
平均値として公表しているものです。
日本の実態の3倍くらい大きい数値になっています。
政府、新聞、テレビは大きい数値を示して、住民に安心感を与えよう
としているのです。これも情報操作の一つです。 西光之輔
Posted by まーめ at 13:53│Comments(0)
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